ではまた。

本日付けでうちの職場から3人のかたが違う会社へと旅立たれた。
全く会えなくなる訳ではないけれど、みなさんとってもお世話になったかたなので、会う頻度が下がるのはやはり寂しい。
でも寂しがってばかりいてもナニなので、離職率がこの業界ではやけに低かった弊社を去る方が増える傾向にある理由を考察してみた。


実は職場が楽しくなくなってきたという話は以前より諸先輩方とすることがあった。一体いつから面白くなくなったんだろう?という話になると、だいたい共通する時期があって、弊社グループが掲げていたとある壮大な構想がぽしゃった風になった頃。

当時末端の社員である我々のところに聞こえてきたのは、これからはxxx(その構想の名前)だ、という意味不明な合い言葉で、そのうちそれがどうなったのかもはっきり教えてもらえることもなく(大失敗に終わったのだけど)、気がついたらその合い言葉は消えてなくなっていた。今やそんな構想は無かった事であるかのように誰ひとりとして口にしなくなった。

こんなこともあって、自社グループが弱体化しつつあることに気がついた経営陣は、売り上げが減っているから利益を増やすために支出を減らすことにした。

時を同じくして弊社は社長が変わっている。その人はいまも社長の座に就いている人だ。新社長はコストカッターと呼ばれる人で、実際この人の社長就任を境にあらゆるコストカットがなされるようになった。そのコストは使った方が大きな利益に繋がるのではないでしょうかなんて思っちゃったりすることであっても平気でコストカットしていった。弊社研究開発部の予算がこの人の就任前から考えたら何分の一だかにまで減らされていたりするのがその象徴。技術力で成り立っている会社であるにもかかわらず、新規技術開発は無駄だから注力しないという思想が伺える。

結果どうなったか。
自分たちで技術を生み出すことができなくなったということは、自分たち主導でものを作ることはできなくなったということで、弊社最大のお客様である研究機関がやっている、勉強だけできて高学歴な人たちが考えた研究のための研究としか思えないような世間の人にとってはなんの役にもたたないことを、それは素晴らしいですね!是非うちでやらせてください!などと思っても居ない事を言っておだてることで仕事をとってきて、誰も使いたくないものばかりを作って目の前の小銭を必死で稼ぎ、結局お客様にエンドユーザがつかないから我々の仕事もちょっとずつちょっとずつ減っていって、本来であればその先にあったかもしれない未来を失ってしまっているように思えてならない。
研究のための研究をしている人たちというのは大概高学歴である上に高収入で、でも興味の対象は研究だけだから、一般の人とは感覚がかけ離れている。普段使っているものがちがうから便利だと思うものが違うし、普段接しているものがちがうから面白いと思うものが違うし、ものにかけることができるお金も違うから、どんなものが世間一般に喜ばれるかなんてわかるわけがない。そんなやつらが考えた仕様に従って作ったって売れるものになる訳が無い。

こんな感じの変化がおこる前の弊社は目の前の利益は二の次でチャレンジングでエキサイティングなものづくりに取り組んでいたから超楽しかった。超楽しいから誰もが前向きに取り組んでいて、皆から新しいアイディアが次々と生まれ、システムは洗練されていき、事実当時携わった仕事の多くは現在の弊社の稼ぎ頭ともいえるシステムに成長している。携わる人の能力が最大限生きるように投資をしないでいいものなんて作れない。
ここ3〜4年以内に入社した人たちはその楽しい状態すら知らないのだから本当にかわいそう。いや、知らずに居られるからいまがいかにつまらないのかに気づく事がなくてむしろ幸せ?

逆に、その過去を経験していると、最近の仕事は技術的に面白いところもこれっぽっちもなく、社会の役にも立たず、政治的理由で世間に出て行ってしまったりもしているけれど、どう考えても別のものを使った方がいいんじゃないの?なんて思ってしまい、ものづくりという仕事をしているというよりは、むしろ単に作業をしているだけという感じが否めない。

さらに、コストカッター社長の就任により、50歳で定年することになり、50歳以上まで居座ると給料が大幅カットされることになった。会社が勝手に「人生で必要なお金はこのような曲線を描くから50歳以降給料が減っても問題ない、そのかわり若いうちに多めになるようにするよ」などと理屈をつけて実践した給与カットだけれど、いまどき晩婚は当たり前で50歳以降も子供にやたらとお金がかかる時期がやってくるのはよくあることだし、そのかわりにと言った若い人たちの給料、、自分の給料だって一向に増える気配もない。将来に不安をもたずに居られないわけがない。

仕事そのものから得られるものがここまで無くなってくると、プライベートを優先させて地元に帰ることを選択したり、違う仕事を求めて会社を変えることを選択したりというのは至極当たり前の行動だと思う。居場所を変えてもやっていける人というのは一定以上の能力を持った人だから、職場の優秀な人ばかりが去っていってしまう。チームとしての力は弱くなり、さらにできる事が限られるようになり、さらに仕事がつまらなくなり、さらに人が去っていくことになる。最後まで残ることが一番面白くない状態になってしまいそうだ。

こんな考察を日々重ねていると自分もチャンスがあれば同じ道を歩みたいと思うようにならずにいられない。今日弊社を去った3人のかたの選択は正しいと思う。
自分の信念を貫き通して充実した日々を送られることをお祈り申し上げます。

駄文長文失礼しました。ではまた。